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オランダの学校教育10 各生徒の歴史解釈を奨励する歴史教育
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リヒテルズ直子さん
Date : 2003.03.11
Number : 010
ML ID : [diversity:1013]
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日本の学校の歴史教育は、古代から現代までを時間の流れに沿って、ほぼ均等に割り付け、教科書の著者(グループ)の一定の歴史解釈に沿った話を受身に習い覚える、という形式が今でも続いている。そして、それは、小学校、中学校、高校と、三度に渡り同じ形式で繰り返され、上級の学校にいくほど情報量が増え、詳しくなる、というだけである。しかも、文部省の検定制度が、歴史解釈の多様性を著しく狭めている傾向がある。
オランダには「教科書検定制度」がない。このシリーズの始めに述べたように、「教育の自由」の保障によって、各学校は、自らの価値観を独自に子供に伝達する自由を得ているからである。著しい異端的な価値観は、まず父母や保護者が気付いて批判する。子どもを他校に転校させる、という形の批判は、学校存続の危機につながる。だから、オランダの教科書の様相・またそこで使われる方法は、出版社によってかなりの違いがある。
歴史教科書についてみると、小学校と中学校では、主要な歴史の流れを追っている、という点では日本と大きな変わりはないかもしれない。しかし、時代ごとの章のテーマには、その時代の歴史が現代社会に対して持つ意味、をそれぞれの教科書なりに表現しているようなタイトルである。高校になると、近現代史の割合がずっと多くなる。古代を一章、中世を一章で取り上げた後、残りの十一章のすべては近現代史の様々のトピックで埋められた教科書もある。「家族と社会」というタイトルで産業革命が取り上げられ、「福祉への道」として19世紀後半以降のオランダとアメリカ合衆国の歴史が比較され戦争経済から福祉国家への流れが追われる。「蘭領インドからインドネシアで」として帝国主義と独立運動が、「全体主義独裁者か民主主義か」というタイトルでレーニン・ヒトラー・オランダの民主主義・全体主義とプロパガンダの役割などが論じられる。さらに、現代史の中には、第二次世界大戦と冷戦及び戦後史、近代世界におけるイスラム教、ファンダメンタリズムやペレストロイカなどのテーマが次々に並ぶ。出来事の時代を追った羅列でなく、「今」の社会に意味のある(と思われる)歴史的事実を、教科書会社なりに掘り下げて問題を定義している。
こうした歴史教育は、新しいものではないが、スタディハウスの導入によって、さらに、生徒自身の解釈の訓練、という要素が大きくなってきているようである。教科書には、たくさんの歴史資料としての写真や手紙、発掘物、その時代の新聞記事などが掲載されている。また、原資料に触れるための図書館やインターネットのサイトなども紹介され、生徒らはテーマを決めて、報告書を作成し、それをもとに教室で議論を求められる。私がインタビューした高校の歴史教師は、「あなたがナチズム時代のドイツに暮らしている、と仮定してヒトラーのプロパガンダを書きなさい」という課題、ナチズムの時代の新聞記事その他の文献を提示し「どれが信憑性があるか、それは何故かを議論しなさい」という課題などがあることを教えてくれた。
付録:『オランダ通信』([LINK])より
ここにご紹介するのは、何社もある教科書会社の中のひとつ、ネイ・ヴェルスレウス(Nijgh Versluys)社が刊行している『語りかける過去(Sprekend Verleden)』という教科書の第2巻目で、大体中学2−3年生が使うものです。因みに全ページ数は175ページ。地の文のフォント・サイズはおよそ“8”(幅53ミリあたりに31文字)、1ページあたり60行の3列組み。ですから、相当量の写真・イラストレーションが挿入されているとはいえ、日本の中学校の教科書の、やたらと大きな文字や行間に比べると、情報量ははるかに大きいです。
この第2巻が扱っているのは、ルネッサンス以降の『新しい時代』(近・現代??)です。では、お暇でしたらどうぞ一度、目次を丹念に追ってみてください。
1.新しい時代がはじまる
1.ルネサンスがヨーロッパに広がる
2.大発見旅行
3.発見の帰結
4.国家の登場
5.権力的君主の登場
2.西ヨーロッパのキリスト教の分裂
1.西欧におけるキリスト教会分裂の要因
2.ルター主義
3.カルヴィン主義
4.旧教会の反応:対抗的宗教改革
5.宗教と政治
3.科学革命と合理主義の世紀
1.科学革命
2.科学革命の帰結
3.合理主義の世紀の特徴
4.啓蒙主義者の思想の敷衍
4.フランス革命
1.革命とは何か
2.フランス革命の要因
3.ブルジョワジーの抵抗(1789)
4.パリの貧民と農民がブルジョワジーを支持する
5.国民会議が変革を求める(1789−1791)
6.各種の集団が権力闘争する(1791−1793)
7.急進派が敵を打倒する(1793−1794)
8.ナポレオン、フランスの新しき支配者
5.産業社会の到来
1.発明が新しい可能性を開く
2.産業社会の特徴
3.工場と都市の急速な成長
4.産業資本主義の登場
5.社会階層の大きな変動
6.資本と労働の間の葛藤
7.マスメディアの登場
8.婦人の平等な権利への闘争
9.人類:科学と技術の主人か奴隷か?
6.イズムの時代
1.社会主義
2.自由主義
3.国家主義
4.帝国主義
7.ロシア、ソヴィエト連邦、そしてまたロシア
1.ツァーによる堅固な専制政治
2.ロシア革命の要因
3.第1次世界大戦が1917年の二月革命を導く
4.1917年の10月革命
5.ボルシェヴィキの成功の要因
6.内乱
7.スターリン支配下のソ連(1929−1953)
8.ソ連、1953−1985
9.ソ連の滅亡
8.アメリカ合衆国の登場
1.先住民としてのインディアン
2.ヨーロッパ人の到来
3.アフリカ人の到来
4.合衆国の成立
5.インディアンたちが駆逐され、殺害され、居留地に収容される
6.対立が内戦に
7.アメリカ南北戦争
8.合衆国は混ざった社会
9.危機から不況へ
10.ルーズベルトとニューディール政策
11.1950年ごろ以降のアメリカの大統領の権力
9.オランダ:共和国から議会制王国へ
1.共和国の成立
2.共和国では誰が権力を持っていたか?
3.社会階層
4.『黄金時代』:共和国の大繁栄
5.『黄金時代』の別の文化表現
6.共和国から立憲君主国へ
7.19世紀における政党の登場
10.国家の組織
1.民主主義:権利と義務
2.立法、行政、司法
3.権力と影響力
4.活動する第二院(衆議院)
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