〈教育の多様性〉の会
  小貫大輔 vs 古山明男 教育の多様性対談
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  競争は人を不幸にする
古山・小貫さん

Date : 2002.12.19
Number : 015

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古山: 結局、競争が問題なんですよ。勝ったやつが社会をリードするでしょ。そいつは、当然、競争のおかげで、そこに行けたから、競争はありがたい。競争のおかげで人格ができたくらいに思ってる。
 受験競争で生き延びなきゃならない。だから金を出しちゃうんだね。教育手段として、賞罰と競争を使うなってのは、これは、ちょっとした思想家や教育者なら、誰でも当たり前のことなのにね。
教師や学校って、すぐに生徒を競争させることに手をだしちゃうのね。麻薬ですよ。

小貫: 今、『菊と刀』という本を読んでるんですが、この本の中にはっきりと書いてあるけど、アメリカ人は競争させると一生懸命働くけれど、日本人は競争させると逆に失敗を恐れて働かなくなると。びびってしまってできなくなると書いてある。

古山: そうなんです。実はそうなんですよね。競争させると、かえって効率落ちてるのにね。

小貫: 戦後日本を占領した人たちは、この本を読んで、そういう民族をアメリカナイズする作戦を、まさに「競争原理の導入」というところに見ていたんじゃないかなと妄想します。日本民族が競争によって行動できるようになったときに、ようやくあの理解不能な民族が理解可能な民族になると。西洋社会にとっては、日本社会に「競争」を持ち込むことは、そういう作戦につながっていたんじゃないかと思えて、ずいぶん考え込んでしまいました。

古山: それは作戦じゃなくてね、単に彼らの文化がそうだから……。だから、ぼくら競争しているのに、あの人を追い越しちゃったらあの人に恨まれるんじゃないかな、怖いな、あの人を先にしゃべらせとこうとか、実はそういうのの固まりでいるわけね。かじかんで、能力でないの。

小貫: 思いやりの社会……。

古山: 思いやりの社会なんですよ。あの人はちょっと負けすぎちゃったんじゃないかとかね。とにかく、日本人にとって大事なことは恨まれないことなんですよ。恨まれるのが最悪。だから、こうやったら恨まれるんじゃないかなということを敏感に察知して。

小貫: 敏感ですよね。『菊と刀』の中に何回も出てくるのが、日本人は敏感だと。その過敏さは西洋人には理解できないと何回も書いている。

古山: ぼくはでも日本人は和で行くべきだと思ってますよ。そのほうが力を発揮できる。ここはもうちょっと変えようがない日本人の性質。それをアメリカ社会というのは競争させればいいと思っているんだ。ところが、1人勝つと、3人くらい敗北者が出るんですよ。発展途上国で、とにかく機関車が必要で、10人のうち1人だけパッと行けばいい時代だったらそれでよかったんだ。今、みんなちゃんと働かないとどうしようもないところにきてるんだよね。それは、自分の能力を出すという意味であって、がむしゃらにやるってことじゃ、ぜんぜんなくて。

小貫: シンガポールが日本の教育を真似したといわれます。戦後の日本の教育の競争主義をシンガポールが取って、さらに過激に押し進めた。小学校のときから競争させて、競争による格付けで学力編成をして、小学校のときからエリートコースとそうでない子をはっきり分けていくんです。シンガポールの政府は、すごく権威主義的な言い方で、「お宅のお子さんにとって一番幸せなことだからやってるんですよ」ということを、彼らの文部省のホームページの相談コーナーに書いている。うちの子は英語がよくできないがために、このクラスに回されちゃっているんだけど、なんとかならないかという親の質問があって、習熟度別のクラス編成は、あなたのお子さんにとって一番幸せなので安心してくださいと言う。
 そういう社会は暮らしづらい。その暮らしづらさを数字で表すと、子どもが生まれてこない国の典型的な国なんです、シンガポールは。一人の女性が生涯に産む子どもの数が1.22。日本の1.33よりも低くて、世界でも低い方から数えて7番目の国です。
シンガポールやマレーシアは、そういう国づくりを日本から学んだと言っているのですが、今このように日本の文部科学省が自信をなくしてくると、何と、シンガポールに教育改革のモデルを探したりするんですよね。もういいかげんにしてくれと思うところです。

 
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