● 本の虫スクゥエアWeb版書評

『医療と教育を結ぶシュタイナー教育』

  • ミヒャエラ・グレッケラー著
  • 塚田幸三,石川公子訳
  • 群青社刊 1,890円

健康を志向するヴァルドルフ教育

石川公子(本書翻訳者)

ヴァルドルフ教育は、一貫して子どもの年齢に応じた育成と、教育と健康をその内的なつながりの中に見出した教育です。 今回、塚田さんと共同で訳した本書は、著者であるグレックラーさんが1998年にアメリカ・サクラメントで行った5日間にわたる講演の講演録であり、ヴァルドルフ教育の特徴を医師の視点から明かにしたものです。 私が始めてこの講演録を読んだとき、医療と教育がこれほど密接に、また具体的な観点から語られている本は日本ではまだあまり紹介されていないと思い、ぜひこの翻訳に関わりたいと思いました。 例えば、乳幼児期の成長の過程が、神経組織の発達経過の図とともに解説され、3歳までの教育のもつ意味の重要性があらためて理解できたり、また18〜9歳まで続く骨格系の発達と理論立てた思考の獲得との生理学的な相関性が、具体的な例によって確認できたりして、ヴァルドルフ教育がいかに子どもの発達に即した内容を持つものであるかが、生理学的な観点から明確に示されています。

本書の魅力は、教育や医療をめぐる記述の行間にあふれる、アントロポゾフィーの濃縮されたエッセンスではないでしょうか。 『神智学』などの著作によって、人間の高次の構成要素についての知識を得ても、それが漠然としたものであり続けるという経験をされた方は多いと思います。 そのような方が本書を通して、アストラル体やエーテル体の働きが人体のどのような生理現象として表現されているかを目にしたとき、それらが感覚的に認識可能なものであるという事実に驚かれるのではないでしょうか。

もうひとつ言い添えたいのは、人間と動物の違いに関してダーウィニズムを克服するための観点を提示する著者の態度です。 特定の方向性に形態を特化させていく動物に対し、人間は体における特化(本能の発達)を持たないがゆえに精神の領域において「自由」であるのだと、豊富な図版を示しながら著者は語ります。 そして自由な存在でいるために、人間は自分自身を教育し、さらなる発展のために自己を克服していく。 ここに著者の姿勢が凝縮されているように思いました。

石川公子
オイリュトミー療法士。 横浜、東京を中心に、病院、医院、自宅の療法スペースなどでオイリュトミー療法を行っている。 健康オイリュトミーの普及にも尽力。 日本の国際アントロポゾフィー医学ゼミナールの開催を支えたひとり。

初出:オープンフォーラムNo.57
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