● 本の虫スクゥエアWeb版書評

『植物への新しいまなざし
 ― ゲーテ=シュタイナー的植物観察術』

  • マーガレット・コフーン著
  • アクセル・エウォルド画
  • 丹羽敏雄訳
  • 涼風書林刊 3,990円

観察とイマジネーションのワークブック

丹羽敏雄(本書翻訳者)

部屋の中の水耕栽培のヒアシンスを毎日眺めるのは楽しいことですが、「ちょっと飽きてしまう」恐れがなきにしもあらずです。 「眺め方」が問題です。 この本は、そんなときにも、大きなヒントを与えてくれるでしょう。

やはり、眺めるといっても、どれだけ「その行為の中に深く入り込めるか」が 重要です。 目の前のヒアシンスを絵に描くという、作業を行いますと、 サンテグジュペリの言葉を使えば、「ヒアシンスとお友達になれ」ます。 結局のところ、「ヒアシンスのために使った時間」が決定的なのです。

さらに、本書でのように、目の前のものを描くと同時に、次の日のヒアシンスを心に描き、それを絵にしてみると、さらに面白くなります。 翌日には、スケッチブックに自分が前日に予想して描いた絵と実物の絵が並ぶことになりますね。 実は、これ、シュタイナーが言うイマジネーションの修練を知らずにやっていることになるのです。 このように、本書によって、植物観察を材料に、知的でかつ芸術的な具体的な作業を通して、人智学的なエッセンスに接することができます。

さらに別の楽しみ方もあります。 本書の至るところに描かれた素晴らしい絵を共感的に見ているだけで、私たちの内なる何かがそれと響きあい、豊かな気分になれるでしょう。 本書には、さまざまな植物を描くための技法や練習の仕方がていねいに解説されていますから、描いて楽しむための手引き書としてもたいへん価値のある一冊だと思います。

丹羽敏雄
津田塾大学教授、理学博士。 数学の教育・研究の傍ら、人智学をドイツ・イギリスなどで学ぶ。 オイリュトミーに親しみながら、ゲーテ=シュタイナー的科学、バイオグラフィーワーク、アストロゾフィーに関心を寄せている。

初出:オープンフォーラムNo.49
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