劇で育む、京田辺高等部
卒業演劇ツアー『スター・ギフト』
NPO法人京田辺シュタイナー学校高等部の卒業生が2年ぶりに卒業公演ツアーを計画中。 前回(2006年)のシェイクスピア劇による古典への挑戦とは対照的に、今回は生徒による完全オリジナル創作喜劇『スター・ギフト』をひっさげて、大阪、京都、横浜でツアー上演します。 その見どころと卒業演劇の醍醐味を、演劇指導の大場浩子さんにうかがいました。
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大場浩子さん
朗唱・言語造形家。エマソン・カレッジ英語コースを経てペレドアセンター「ことばとドラマの学校」で学ぶ。 現在はNPO法人京田辺シュタイナー学校で演劇を教えている。 一昨年に初めての高等部卒業演劇『テンペスト』のツアーを経験し、今年も12年生10名と卒業演劇に取り組む。
Forum3:卒業演劇を初めて担当された2年前の『テンペスト』では、なぜツアーを組まれたのですか。
大場:「子どもたちの兄姉」として誰もが暖かく成長を見守ってくれた彼らが卒業していくときに、自分たちから社会に出かけていく方法を見つけたいと思ったんです。 学内で「よかったよ」と受け入れられたものが、本当に学外でも通用するだろうか。 そこを子どもたちに挑戦してほしかった。
Forum3:なるほど。 それが『テンペスト』に結実した。
大場:ええ。 生徒たちはことあるごとに「挑戦」と言っていました。 中には演じるのが嫌いな生徒もいたんです。 しかし、クラスでこんな大きな舞台に立つことは二度とないのだから、今回は思いっきりやってみたいって。 私が演出するというよりは、生徒がどれだけ自分から引き出してくるかにかかっています。 舞台でできるのは、下手でもその一生懸命さを見てもらえるかどうかだけなんです。
2006年の卒業演劇『テンペスト』最終上演終了後のスナップ。

Forum3:京田辺が育ててきた彼らの才能も大きいのでは?
大場:演劇の専門家からも、彼らの感情の機微や表現の繊細さをほめていただきました。 この感受性の豊かさは、確かに日々の学びのなかで培われてきたものだと思いますね。
Forum3:今回の公演は?
大場:今回は生徒の創作作品で、ひとつの星の発見をきっかけにいろいろな人が集まってくるんです。 その星の命名権を狙っている人、恋の悩みを抱える人、勉強ばかりしている学生……。 彼らが引き寄せられるように集まった、その星の市民講座で、それぞれが抱えていた問題が解決したり、夢の実現に向かっていったり、じつはその星からも何かがやってきていて……。

Forum3:ああ! まさに「星の時間」のドラマですね。
大場:はい。 とにかく楽しい喜劇をやりたいというクラスの希望があって、そこに生徒たちがさまざまな新しい視点を入れながら深めて行ったら、登場人物一人ひとりの人生の深みを垣間見るようなヒューマンドラマが出てきた。 それはそれぞれの生徒が暖めてきたキャラクターから生まれたものだと思います。
登場人物紹介!(左から…)
- 星の子どもステラ
- 金目当てのフリージャーナリスト アレックス・ウェルチ
- 専務サイモン・ブラック
- 会社の再建をたくらむ社長トム・バート
- ジョニーの妹シンディー・シンプソン
- 小惑星を発見した天文学者ダール・ハミルトン
- トムの息子カール・バート
- ダールのライバル ジョニー・シンプソン
- ダールの助手 講義を手伝うエリザベス・パーカー
- エリザベスの従弟ケビン・スタイン
ものがたり
2008年 イギリス・ロンドン。
一人の天文学者が、1つの新しい星を見つけた。
古い博物館で開かれたその講義、集まったのは…
記者に学生、掃除夫!?
宇宙も驚くヒューマンドラマ!!
「スター・ギフト」
12年生 生徒原作
ロンドン市内の博物館で、ある日、その夜限り肉眼で見えるという小惑星についての講義が開かれる。 講義室にはダールとエリザベス、参加者7人。 彼らはそれぞれに悩みや目論みなどさまざまな思いを持ってきていた。
講義は参加者によって度々中断されたり、出て行ってしまう人もいたりとなかなか進まない。 そしてついには口論が始まる。 そんな中、突然のハプニングに一同はばらばらになってしまう。 しかし、それをきっかけに彼らの心は動き始める――。
Forum3:具体的にはどのように進めていったのですか。
大場:11年の後期から作品選出にかかり、とにかく喜劇をやろうと。 古典から現代劇まで、生徒が探してきたり、私が提案したりした脚本を読みました。
最終的にシェイクスピアの『空騒ぎ』や現代劇の『パパ・アイ・ラブ・ユー』などが残ったのですが、どちらもおもしろくて。 そうしたらひとりの生徒が、「これをあわせたような創作は?」と言って、あらすじを書いてきた。 それが昨年12月。 「冬休みいっぱいで書ける?」と言ったら、書き上げてきたんです。
クラスでそれを読んで、初めて人に見せたいという気もちになったようです。 最初は学区外公演は大阪と京都ぐらいのつもりでしたが、「もっと遠くでも」と、横浜公演が決まりました。
後は校正台本を練って、脚本、演出、大小道具、広報、音響等々、様々なグループを立ち上げ、ゲネプロまでのスケジュール表を作成して、その見通しをもって全体を動かす構成・設備グループが徐々に動き出しています。
広報にご協力ください!
多くの方に観ていただくことが励みになります。 シュタイナー教育をまったく知らない方にも、ぜひおすすめください。
- 京都公演:7月13日(日)
関係者対象- 大阪公演:7月15日(火)
大阪プラネットホール- 横浜公演:7月18日(金)
蒔田・南公会堂- 京都講演:7月21日(祝)
同志社女子大学新島記念講堂★ 各公演とも入場無料
取材協力:京田辺シュタイナー学校
Forum3:稽古はどんな風に?
大場:まず脚本を徹底的に読み込みます。 その人物が台詞をどんな思いで言っているのか、さまざまな感情や台本の行間を読ませる。 「そこをあいまいに表現したら観客は寝るよ」って。
クラスで演技をあわせる時までに自分の仕事としてそれを台本に書き込んでおく。 考えていないものを動くことはしない。 あいまいなものを動くと時間がもったいないです。 実際のシーンづくり中に、生徒たちが立ち止まって考えてしまうから。
息づかいが聞こえないせりふがあれば、せりふだけの練習に集中する。 動きの練習は動きだけ。 動きとせりふは分ける。 それをまたあわせて舞台に上げる。 たいへん細かく分業します。
Forum3:なるほど。 早朝マラソンもしているとか。
大場:呼吸が深く腹式になり、安定した呼吸をつくれるからです。 後ろから彼らの脚の動きや体のぶれや癖を見て、重心、脚の使い方、手の振り方やねじれを見ることも大事です。
演劇指導は生徒の人格形成という聖域に関わる作業だと思っています。 劇だからこそ、直接その部分にまともに関わりながら向き合って、乗り越えていける。 だからこそ、人を感動させるものができる。 そこは生徒たちもわかってくれているので、あとは私がどれだけ全力で向かっていけるかですね。
Forum3:期待しています。

大場:大勢の方に観ていただけるよう、いい舞台を作ります!
初出:月刊オープンフォーラム Jul. 2008 / No.73
2010.11.24 Trackback 0




