Apr. 2007 / No.60
バイオダイナミック農業にも広がる
有機認証入門
今月のこの人:浅野英公子さん インタビュー
日本でも有機JASの法制化を通してようやく有機農業の認証が一般化してきましたが、欧米ではバイオダイナミックの農業認証が広く定着しています。 オープンフォーラムでは、有機農業検査員の浅野英公子さんに「有機基準ってなに?」という素朴な疑問をぶつけ、検査員の目から見たバイオダイナミック農業の可能性について語っていただきました。 (写真:2007年バイオダイナミック農業講座)
Forum3:有機農業の検査員というのはどんなお仕事ですか?
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あさの えくこ さん(写真右)
8月8日生まれの富山県出身、茨城県在住。 現職はオーガニック検査員、認証コンサルタント、講師。現在日米欧11の認定機関と契約中。 教職、学習塾専従などを経て食いしん坊が嵩じて現職に。
BD家庭菜園初心者。 とれすぎた野菜をいかに飽きずに食べるか、保存するかに情熱?を燃やしている。
2003年より「つくばライアーの響き」で活動中。 「自分を拡げ、深めるという意味では畑仕事もライアーも同じ。 ただ、草取りをすると手がぼろぼろになってライアーが弾けないのが悩みです」と浅野さん。 つくばライアーのメンバーが何人か核になり、子どもたちとその保護者に内的な静けさを体験してもらう「星のハーモニー」の活動も合わせて実践中。
浅野:現在では法的な基準を満たした生産物のみが「オーガニック」と名乗れることになっています。 そのためには誰かが検査をしなければならない。 それが検査員の役割です。
Forum3:具体的には?
浅野:契約した認定機関の依頼を受けて、まず生産者が提出した書類で畑や生産物の情報、加工の内容などを確認します。 それでOKであれば、現地へ赴いて、田畑や施設を見たり、生産者の日誌や記録を確認します。
Forum3:コーヒーの焙煎工場なども対象になるのですね?
浅野:そうです。 コーヒーでは焙煎や粉に挽く工場までオーガニックとして加工する必要があります。 じつはオーガニック専門の工場は非常に少ない。 そこで問題になるのが混入です。 せっかくのブルーマウンテンも、安物のコーヒーがミルに残ってたら風味が落ちますね。 それと同じ理屈です。
EUなどでは倉庫なども検査対象になっています。 数年前にドイツで、農薬を使っていないのにベビーフードから農薬が検出されたことがあったんです。 その原材料が加工前に保管されていた倉庫が、以前に農薬の保管に使用されていたのです。
Forum3:厳しい検査にも背景があるのですね。 BD農法にも基準があるのでしょうか。
浅野:はい。 BD農法においても、調剤を必ず使うとか、農場外から堆肥を持ち込まない等々の国際的な基準が、各国のBD協会を通じてつくられてきています。 オーストラリアのように、国の基準の一部になっている国もあり、そうした厳しい認定を受けた農産物だけがBDの名称を使うことができるんですね。 ただ、日本にはBDの基準をもつ認定機関はなく、これからの課題ということです。
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日本の有機農業基準
有機JAS規格とは?日本の有機JAS規格は、登録認定機関が以下のような内容を満たすことを認めた場合にのみ有機JASマークの表示を認め、それ以外は「有機」「オーガニック」などの表示を禁止しています。
◆ 有機農産物
種まきや植え付けにあたって、禁止された農薬や化学肥料を2年以上使用しておらず、生育期間中も使用していない。 遺伝子組換え技術を使用していない。
◆ 有機畜産物
主に有機の飼料を与え、野外への放牧など、ストレスを与えずに飼育している。 抗生物質等を病気の予防目的で使用しておらず、遺伝子組換え技術も使用していない。
◆ 有機加工食品
化学的に合成された食品添加物や薬剤の使用は極力避けており、 原材料の95%以上に有機生産物を使用している(水と食塩を除く)。 遺伝子組換え技術を使用していない。
Forum3:日本の有機基準にはどんな背景がありますか。
浅野:有吉佐和子さんの『複合汚染』を境に有機農業が盛んになるにつれ、「何をもって有機と言えるのか」という問題が出てきました。 有機の生産者は一匹狼だから、「自分の農法がいちばん」というくらいでないとできないんです。 だから、生産者同士が互いに対立し、共通の見解ももてなかったのです。
Forum3:それで有機認証のニーズが出てきたわけですか。
浅野:ええ。 もうひとつ、マクロビオティックや日本の自然食を海外に輸出しようという動きが出てきた際に、海外に示せる安全の裏付が何もなかったわけです。 じゃあ、とりあえず海外の基準をということで始まったのが、1990年頃だと聞いています。 現在は有機JAS基準が定まり、ようやく市民権を得始めたところですね。
Forum3:デメターの名前も目にするようになりましたね。
浅野:BD農業の基準のなかでもデメターは長い歴史があり、知名度も高いですね。 そもそもオーガニックの発想自体、環境保全に本来の目的があるのですが、その中でもデメターは環境に無駄なものを持ち込まず、地域のものを循環させていくという発想が徹底していると思います。 ただ、日本においては環境を考えてそれを選びとる人がまだまだ少ないですね。 その点はドイツと大きく違います。
Forum3:なぜですか?
浅野:教育だと思います。 ドイツでは、環境教育とともに、何を選ぶかという消費者教育が徹底しています。 日本にはその視点が欠けていて、有機JASのものが売れない現実がある。
Forum3:世の中には1円でも安くという気分がありますね。
浅野:家計簿をつけてみればわかりますが、1円玉をケチってもたいした節約にはならないんですよ。 かえって医療費のツケが回ってきたりして。
Forum3:BDの農場が力にならないでしょうか。
浅野:BDには将来性があると思います。 一般の有機農業は油かすなどの有機肥料をかなり買いますが、BDは10年くらいで余分な堆肥が必要なくなってくるため経済的なんです。
BDを神秘的な農業だと言う人もいますが、私はとてもまっとうな農業だと思います。 EUの有機基準を読んだとき、そこに輪作の仕方が細かく規定されていて、初めは「なんだ、これは?」と思いました。 そのときに新訳の『農業講座』を読んだら、その思想が明確に書かれていた。 EUの基準にも影響しているのではないかと思います。
Forum3:面白い。 EUの有機基準からBDに出会う日本の農業者も出てくるかもしれません。
浅野:耕作地が余っている時代ですから、可能性は充分あります。 有機もひとつでないと気づいている若い方も多い。 その中でBDに目を向ける生産者が増えていくことを願っています。
Forum3:貴重なお話をどうもありがとうございました。
初出:月刊オープンフォーラム Apr. 2007 / No.60
バイオ‐ダイナミック・ネット・ジャパン
オープンフォーラム早稲田で7年にわたって続いているバイオダイナミック農業講座の参加者から、BD農業のためのネットワークが生まれました。
管理人は建築家の斉藤資仁さん。 各地のBD農場や実践者、浅野英公子さんのような農業関係者をはじめ、BD農業に関心をもつ人たちの情報交換と資料共有の場として活用されていくといいですね!
※ 関心をお持ちの方はフォーラム・スリーにお問い合わせ下さい。
