イタリア旅行チーム

2006年5月8日〜5月20日
「アンドリューと行くイタリア芸術の旅」全軌跡

アンドリュー・ウォルパートさんの魅力を知っていただくために、2006年春に行われたイタリア旅行の報告をご紹介します。 ミケランジェロの生涯を4つのピエタ像に追うイタリア旅行。 ドイツ人を含む8名の参加を得て実現したツアーはまさに芸術そのもの。 見て、感じて、本質の深みへと参加者をいざなうアンドリューさん。 「実際は100倍も面白かったんだから!」という報告をお読みください!

主催:Lympha / イタリア旅行チーム

イタリアルネッサンス美術旅行2006
日程:2006年5月8日〜20日
行程:ローマ/アッシジ/ウルビーノ/アレッツォ/ペルジア/フィレンツェ/ミラノ
ガイド:アンドリュー・ウォルパート
参加者:全8名(日本人7名/ドイツ人1名)

詳細はこちら:Lympha

■ コーヒー飲みたいか? イェー!

全行程

Forum3:いい旅だったようですね!

柳沢:あんなに歩くとは。

福島:アンドリューって、噛み付くように歩くの。すっごく速いの。

升本:用もないのにクラクションをブーブー鳴らすし。

田村:180キロで運転中にハンドルから手を離して、ストレッチするの。

尾崎:私は隣で祈ってました。

升本:「コーヒー飲みたいか? イェー!」って、ひとりで行っちゃう。

柳沢:ローマでパンテオンが目の前なのにあらぬ方向に行くんだけど、カプチーノの店なんだよね。

一同:ここが一番おいしかった!!

柳沢:ヴァチカン美術館の朝…。

福島:雨がワーッと降りだしたのに、「降ってない、気のせいだ」って、彼は切符を買いに。私たちは外なんです。

柳沢:夜のミーティングで「今日は雨が降ったという幻を見た人がいるようですね」なんて言ってた。

Forum3:夜には必ず話し合いが?

尾崎:どんなに疲れていようと。

田村:朝4時までみたいなノリです。

福島:デリカテッセンでいろいろ買ってきてね。学生会館とかYWCAとかに泊まったから、集会所や中庭があるので、持ち寄って食べて。

尾崎:最初の顔合わせもそういう感じでした。私はアンドリューとは初対面だから、すごく緊張してたんです。だけど彼が「じゃあ、何か質問は?」と言うので、「フィレンツェに友人がいるので会いたいんですけど」って言ったら、「ノー」。エッと思って負けずに手を挙げたら、「君は1回質問したからもうダメ」って。それで、「この旅はこんなぶっちゃけた雰囲気で進むのか」とわかって、すごく気が楽になった。

■ ピエタ・レッスン

第1ピエタ
サンピエトロ寺院の第1ピエタ像

Forum3:なるほどねー。まだまだありそうですが、本題のピエタの話を。

田村:第1ピエタ像はサン・ピエトロ寺院のガラスの中に入っていました。

升本: 「彫刻の流れを見ろ」と言われて、右と左から20分くらいかけて見て、集まって話をして、また見て…。

福島:一点に目を止めながら右から左へと移動していくと、急に表情や印象が変わるところがあるんです。そのときの体験はどうかとか、そんな質問を先にしてくれるんですね。その質問書がどんどん長くなっていって…。

最初は何か正しい答えがあるのかと思っていたんですが、わからないのはそのままでよくて、みんなが話しているうちにそこから新しいものが生まれてくるんです。

イタリア旅行チーム

升本:みんなが共同でつくっていく。

尾崎:最初のモーゼ像のときには「何を見たらいいんじゃい!」状態だったんですが、メディチ家霊廟を見たときは、向こうの方から語りかけてきて、それを言葉にすることがぜんぜん苦じゃない。これは何を表していて、関係性はこうでと、本当に見えてくる。

Forum3:第1ピエタは一見すると、とても完成度が高く見えますね。

福島:それがまさにこの旅行のテーマだったんです。20代前半であんな完成度の高いものを作ってしまって、それからどうするの?っていう話です。

柳沢:完成度が高いだけに、フォルムの流れなどの造形的な見どころは第1ピエタがいちばん大きかったと思います。第2、第3、第4に進むに連れて、ミケランジェロの内面へと、少しずつ視野の重点がシフトしてくる。

田村:第2と第3はフィレンツェにありました。フィレンツェの街ではダビデ像が強烈だった。

福島:私はブルータス像!

柳沢:第1ピエタと第2ピエタまでが長いんですよ。第2ピエタは70才くらいで作っているから、その50年の間に作品がたくさんあるんだね。

田村:50年間のブランクがあって、あの第2ピエタ! 素晴らしかった。

柳沢:後ろからの姿がいいんだよな。

福島:人物の間の距離も重要で、マリアがイエスに顔をつけているのは、感情的な愛が示されていて、そのマリアにはイエスを支える力がない。父性的な存在としてアリマタヤのヨセフが全体を支えている。この作品から第3ピエタへの変化がまたすごいんです。

田村:たった1年後の作品なのに!

第2ピエタ 第3ピエタ
第2ピエタ像(左)/第3ピエタ像(右)

福島:こっちはマリアが少し離れているでしょう。距離をとってイエスを見ることができる、そんな種類の愛に変化した。ヨセフの性質がマリアのなかに融合して、ひとりでイエスを支えられるようになったという感じです。

柳沢:ジェンダー問題に関心がある好さんはそのことに感動してましたね。そしてミラノ、第4ピエタ。

福島:ここは展示もすばらしかったんですよ。自然光で、まわりをぐるっと見られるようにしてあって。

■ 旅の終わり、最後のピエタ

第4ピエタ
第4ピエタ像(スケッチはすべて柳沢玲一郎さん)

升本:羽みたいできれいでした。

福島:三日月のようね。前から見るとマリアがイエスを抱え上げているように見えてたのが、後ろに回っていくとイエスがマリアを背負っているように見えるわけ。イエスの足はもう力が入っていない。足の萎えたイエスが年老いた母親マリアを背負っているという感じで、弱いもの同士が支えあっている。それが感動的だった。強いとか弱いとか、そういうことではなく、支えあうことができる。そういうメッセージがやって来て、涙がでちゃった。

Forum3:弱さというのは、当初の作品にはなかったものですね。

柳沢:筋肉が落ちて、ひねりも捨てて。

中村:一緒に呼吸できる感じがした。

升本:彫るのを途中でやめた腕が残っているんですよ。これが美しい。マリアの顔もやり直しをして、目の位置が残っていたりするんですね。かつて迷うことなく完璧なものを作ったミケランジェロが、ここでは最後まで迷いながら作っていたという…。

柳沢:ひとりひとりピエタを見上げている写真。あれがまたいいんだよね。

升本:みんながピエタと自分の固有の関係をもてたことがわかる。

柳沢:この旅が人生のターニングポイントになったってみんな言ってるじゃない。旅は時間のなかで体験があるものだから、ピエタの変容とミケランジェロの人生との対応が、ぼくたちの転換期に重なったんだと思います。

イタリアを疾走した8人の仲間たち!

福島由美さん:帰ったら、読めなかったシュタイナーの本が読めたの。要所要所で新しい価値観が人生に付け加わった感動の旅でした。

升本浩子さん:講座とは違う、楽しい、おかしい、お茶目なアンドリューがいて、メンバーも最高。まだ心のなかで旅は続いています。

水島好さん:一作品に数時間。仲間とともに新しい境地を創り出す。泣いて笑って、すくすく成長の毎日で、見えない世界が見えてきた。

中村三和子さん:ここまでやるとは思わなかったですね。彫刻を通して、思春期を迎える子の前にしっかり自分を立たされた旅でした。

尾崎順子さん:フリーのTVディレクターです。帰ったらミケランジェロの番組の担当に。何も知らずに参加しましたが、すごくよかった!

田村祐子さん:旅の言い出しっぺ。でも、みんなで作り上げた旅だと感じてます。親密でまじめで、すばらしく贅沢な旅でした!

柳沢玲一郎さん:写真とはぜんぜんちがう。芸術作品を見る目が変わりました。大きな美術史の断片に流れが見えてきた旅でした。

エッダ・ニーミッツさん:ドイツから参加した大工&英語教師。疾走するアンドリューの車を追っての2号車の運転、ご苦労様でした!

第4ピエタと対話するアンドリューさん
イタリアを疾走した8人の仲間たち!
イタリアを疾走した8人の仲間たち!
イタリアを疾走した8人の仲間たち!