Feb. & Mar. 2006 / No.49
地域と歩む、
阿蘇のぽっこわぱBD農場
今月のこの人:假野祥子さん インタビュー
オープンフォーラム早稲田で毎年2月に開催されている農業講座が、今年で『農業講座』全6講を一巡します。 この6年の間に育ったもの、未来への展望を、農場の近況報告とともに、ぽっこわぱ耕文舎の假野祥子さんに語っていただきました。 (写真:ぽっこわぱ耕文舎の田んぼ)
Forum3:6年前に始まった農業講座が今回でひと区切りを迎えます。
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假野祥子さん(左)
ぽっこわぱ耕文舎主宰。
1982年より夫ドニー・ピリオ(写真右)とともに農場を始め、日本におけるバイオダイナミック農法実践に取り組む。
1990年、多くの人々の支援を受け阿蘇に移住。 阿蘇のぽっこわぱ耕文舎にて、日本の中山間地農村の歴史・人智に学びながら、ヨーロッパで生まれた農法を阿蘇の地に繋ぐ実践に携わる。
農場内では「おひさまのいえ幼稚園」「放課後クラブ」(学童保育)も併設している。
假野:『農業講座』はすごく難解で、何度読んでもわからないけれども、同時に何度読んでも新しい発見がある。 これを農業を実践している人たちと一緒に読んでいけたらなあ、という思いがあったんです。 たっぷり時間のとれる連続した場を与えられたのはありがたいことでした。
Forum3:参加者もずいぶん多かったですね。
假野:そうですね。 参加者の職業が多岐にわたっていて交流も楽しかったですし、「農」の存在を都会の人と共有できたのがよかったですね。
Forum3:毎回、講座の雰囲気にも変化がありました。
假野:テーマがその都度変わりますから、そのときのテーマに特別な関心をもって参加される方もいます。 たとえば前回は「種」がテーマでした。 このテーマは有機農産物の認定の問題とも関わっていて、検査員の方(浅野英公子さん)が講座に参加されました。 私もドニーも、そういう方と交流できたのは嬉しかったですね。 その方はいま、講座に集った人たちのネットワークをつくろうとされています。
Forum3:楽しみですね。
假野:6年間続けられた理由は、参加者が非常に自主的だったということですね。 農家の方が「バイオダイナミック(BD)の調合剤を使い始めました」とか、「東京は遠いから自分たちのところでも」と、北海道や鹿児島でも講座が始まりました。 北海道の主催者の方たちは、岩見沢でBD農業を始められましたね。
皆さん、学ぶことも好きだけど、それが生活のなかに反映されている。 現実のなかでいろいろな問題と取り組まれている方が、BDの世界観を知ることによって「ああ、こういう見方があったか」と、閉塞感を克服していける。 私たちもそうだったように、新しい認識の可能性をBDに感じてもらえたのはよかったと思います。
Forum3:なるほど。 ぽっこわぱ耕文舎の近況についても教えてくださいませんか。
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BD農業者の組合をつくりたい!
現在、ぽっこのスタッフの一人、二宮義憲がJAS法の有機農産物の検査員をしていますが、その彼が、どんどん基準があいまいになってきていると言っています。 国は小さな農家は切り捨てたいから、企業を入れた農家経営を進めたい。 だからいま、大規模経営向けの有機の規約づくりが行われています。
「有機」という定義のなかには低農薬も含まれています。 だから、有機と無農薬はまったく別のカテゴリーです。 有機のふたを開けるとあいまいなものがいっぱい出てくるのはそのためです。 それに対して、デメターの規約はすごく厳しいわけですよ。 こういうときだからこそ、デメターのような認証基準を提示した方がいいのだろうかと考えています。
地元の仲間も増えてきたし、研修所も立ち上がるし、フォーラム・スリーのおかげで東京や北海道の人たちとのネットワークもできてきたから、そろそろBDの組合を立ち上げたいと思っているんですよ。 自分たちが孤立した存在じゃないんだというネットワークですね。 私たちが一生かかっても学びきれないBDですが、志を同じくする人たちと学びと実践の場を広げていきたいと思います。
假野:ぽっこ(ぽっこわぱ耕文舎)周辺のBD生産者は7家族に増えました。 ここ数年、1年以上研修を終えられた方がそのまま村に留まって家庭を築き、緩やかな共同関係を結んでいくという傾向があります。
皆さんにも知っていただきたいのは、地方の中山間地の農村が抱える問題として、後継者不足があります。 農地が荒れていくのに就農する人はいない。 そういうなかで、ぽっこの仲間の若い人たちの力は地域でとても感謝されているのですね。
もうひとつは、都市部の水資源との関わりです。 地方都市周辺の中山間地の農地は、都市部の人たちの水がめとしての機能をもっています。 田んぼがもっている保水力ってすごいんですよ。 上流部にどれだけ田畑があるかによって、水資源に関する環境が変わるんですね。
Forum3:知りませんでした。
假野:ヨーロッパでは水資源のために中山間地の農業を国が保護しているんです。 財源は都市部の人が水を利用する際の税収から当てられています。 日本の場合はそこまで明確なお金の区分はないですが、ここ4、5年の間に国が補償を始めたんですね。 その際、「地域の農業を守って、農業後継者を育成している実績がないと補償金は出しませんよ」と国は言うわけです。
私たちの地域では、地区の営農組合に対して一定の割合でその補償金を納めています。 組合員が集まればお金は何百万にもなりますから、それをどのように使っていくか提案しあいます。 その際、唯一外から研修生が入ってきて、農業後継者として着実に地元に定着しているぽっこの存在は、地域にとってもメリットがあるのです。
その流れのなかで、未使用になっていた村の商工会議所の建物を営農組合が借り受けてくれて、この春に研修所としてオープンするんですよ。
Forum3:いいですね!
假野:BDと言っても同じ農業ですから、地域の人たちとの接点がなければ続けられません。
私たちも若いころは、有機無農薬やBDの理解者以外とは関わりたくないと思っていた時期もありました。 でも、そういうことを言っていれば、どんどん自分の世界は狭くなっていく。 反対に、異なる世界の人たちも認めながら、お互いが共有できるところで集えるところがあれば、いろいろな発展があるのではないか。
その意味で、この研修所が与えられたことはありがたいなと思っています。 多くの方々からご支援をいだきながら、仲間と一緒にこつこつやってきたことが少しずつ地域の信頼を得て、今また次の段階に進んできたというところでしょうか。
Forum3:これからが楽しみですね。 どうもありがとうございました。
初出:月刊オープンフォーラム Feb. & Mar. 2006 / No.49
バイオダイナミック農業講座 in オープンフォーラム早稲田
ぽっこわぱ耕文舎のドニー・ピリオさん・假野祥子さんをお招きして開催するバイオダイナミック農業講座は、毎年2月、オープンフォーラム早稲田にて開催しています。
実践経験に基づいたドニーさんのお話と『農業講座』の解説。 2007年から始まったゲーテ的自然科学研究者の佐々木和子さんによるレクチャーもたいへん好評です。 BDの野菜やコーヒーの試食・試飲会も楽しみのひとつ。
この講座からバイオ‐ダイナミック・ネット・ジャパンもスタートしました。
※ 開催時期と内容については毎年12月頃にご案内しています。
