先日、元国立教育政策研究所の研究員で、今年の春から聖心女子大の准教授に就いた永田佳之さんとお話する機会を得た。お子さんをオーストラリアのヴァルドルフ学校に通わせた経験もあり、ヴァルドルフ教育にも理解のある研究者で、「シュタイナー教育の最大の特徴はセレンディピティーがあること」という彼の持論は傾聴に値すると思う(セレンディピティーというのは、意図せずにいろいろな宝物を手にする才能というような意味で、「幸運力」とでも訳せるかもしれない)。
比較教育学の専門家である永田さんと日本のオルタナティブ教育の状況について話しているなかで、オルタナティブのなかでヴァルドルフ教育だけが独走しているのが気になるね、ということが話題になった。永田さんによれば、これは日本に限ったことではないらしく、世界中でヴァルドルフ学校がダントツの躍進を見せているのだ。ヴァルドルフ教育の柱になる理念が明確にあり、カリキュラムや教員養成が整備されていることが、その躍進を支えている。
これは喜ばしいことかと言えば、そうとばかりも言っていられない。社会というものは多様性によって健全性を保っていくものだし、オルタナティブな選択のなかで自分と比較できるような「朋友」がいることでヴァルドルフ教育も自分たちを客観視する視点をもちうると思う。ヨーロッパやアメリカが経験したように、ヴァルドルフ教育の突出ぶりが社会のなかに反感を呼び起こし、大規模なヴァルドルフバッシングにつながる可能性もある。
それに、世の中には、公教育には満足できないけれども、ヴァルドルフ教育も肌に合わないという人もいる。そのような人たちが学校探しをするなかで、ヴァルドルフ学校の門を叩くこともあるはずで、そこで適切な対応ができることはとても大切だ。自分たちのことだけに必死であればよいという時代は終わったのだと思う。そのためにも、ヴァルドルフ教育関係者がオルタナティブという視点をもつことが、ますます必要とされてきていると感じている。
そんななか、イエナ・プランという教育メソッドについて詳細に紹介する催しの情報が飛び込んできた。月刊オープンフォーラムでもご紹介した、オランダ在住のリヒテルズ直子さんが進めている企画だ。個別教育を重視するイエナ・プランの実践は、ヴァルドルフ教育を目指す人たちにも刺激的な内容をもっていると思う。
― 一人ひとりの子どもを育てるマルチエイジの小学校 ―
シンポジウムとワークショップ
2007年11月10日(土)11日(日)
主催:オランダ・イエナプラン教育の会
後援:在日オランダ大使館、朝日新聞社、平凡社
協賛:株式会社カグヤ
http://home.planet.nl/~naokonet/eventguide.htm http://www.freeml.com/diversity/4803
社会のなかで「ともに発展していく」という感覚を磨くことが、ヴァルドルフ教育の真の発展の鍵を握っている。イエナ・プランのような動きに注目していくことは、そのための大きな助けになることは間違いない。
