さて、緑の森の学校だが、この学校が対案学校として始まった背景には、この学校を特徴付けている興味深い実践への希求があったという。それは、いわゆる健常の子どもたちと障がいをもつ子どもたちが同じクラスで学ぶ「統合教育」への取り組みだ。これは、韓国の国内でも希有な試みであるばかりか、世界のヴァルドルフ教育の流れのなかでも数少ない試みに入る。治療教育という分野が早くから確立されたアントロポゾフィー・人智学の世界では、統合教育への流れが大きくなる余地がなかったことがその理由だろう。
緑の森の学校では、定員の1割までなんらかの障がいをもっている子どもたちを受け入れる方針だという。クラス担任は原則としてひとりで、副担任は置かず、その代わりに専門のトレーニングを受けた教師(アントロポゾフィーの治療教育ではなく、韓国で一般的に取り組まれている特別教育の教師)を置いて、各クラスのニーズに応じてその教師が臨機応変に対応しているという。この方法で授業がきちんと成立するのはすごいことだと思う。日本でも栃木に統合教育を目指したヴァルドルフ学校があったが、様々な事情で、継続が難しくなったようだ。
まず統合教育という大きな目標があり、その上でヴァルドルフ教育という方法論が援用されている。これが緑の森の学校のイメージではないかと、金さんのお話から印象づけられた。金さんは、この学校方向性に大きな可能性を感じていると言い、統合教育への方向付けのなかでコリスコ会議に意義を見出しているとも語った。
コリスコ会議というのは、最初のヴァルドルフ学校の校医だったオイゲン・コリスコ医師が提唱した医学の教育的なアプローチを継続・発展させていくために、教師、医師、父母、療法士、治療教育者たちが専門領域を越えて対話を重ねていく国際カンファレンスだ。アジア地域でも、2006年にインドとフィリピンで開催されている。
統合教育に関わる金さんが、この流れに関心をもつのは自然なことだと感じる。「コリスコ会議を日本と韓国が協力して開催したら素晴らしいことだと思います。手を携えれば、物事はより容易に実現できるのではないでしょうか」と、金さんは投げかける。松浦園さんとの話しあいでも、日本シュタイナー幼児教育協会と韓国の幼児教育者養成グループとの交流を前向きに検討していこうと、意気投合した。翌日からは藤野のヴァルドルフ教師の集いに合流し、日本の学校との交流の道を探られるのだろう。
韓国と日本のヴァルドルフ学校とヴァルドルフ学校、幼稚園と幼稚園、そして国際会議の共催。金さんの視点ははじめからおわりまで「手をつなぐこと」から離れることがなかった。うん、面白い。
韓国にコネクショニストの友を発見。貴重な出会いの一日だった。
* 緑の森の学校のプロモーション・QuickTimeムービーを預かった。とても生き生きした映像で、統合教育の一端もかいま見えて面白い。見てみたい方は、ご連絡ください。
